前回vol.69阿佐ヶ谷住宅の近くに、嘗てド迫力の退廃美を誇った横に連なる団地が存在していたので、これを機にUPしておきたい。

善福寺川から西へ、住宅街をクネクネと彷徨うと、突如目の前に朽ち果てた城壁が立ちはだかる。城壁といっても万里の長城のような悠久の時をノンビリと感じさせるものではない。戦慄というか、来てはいけないところ、見てはいけないものを見てしまった感覚に瞬時に陥る。
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ここは網走かアルカトラズか。最果て感が半端ない!

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初めて生で見た時の衝撃は今でも忘れられない。黒ズミだらけのボロボロの灰紫色の5階建てコンクリート壁が横に延々80m近く連続している。
テレビ番組『モヤモヤさまぁ~ず2』で“北斗の拳”と形容されたように、「時はまさに世紀末的」的な今現在じゃない感で満ち溢れている。
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荻窪団地は日本住宅公団により昭和33年の竣工と同時に入居開始。ということは、先の阿佐ヶ谷住宅と全く同時期に同じ公法人により、この至近距離に全く性質の異なる建造物が建設されたことになる。
いや建設当初はこの団地も近未来的で入居困難なほどの人気だったろう。
しかしこれまた同時期に取り壊しが決まり、成れの果てはこうも印象を異にするものだろうか。
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(一番西側には外階段が)

この北斗の拳部分は団地内の北端に位置し、1~3号棟が繋がっている。この部分全てが単身棟というから驚きだ。当時どんだけ単身者がいたんだと。
調査が及ばず推測で申し訳ないが、近くに大規模工場でもあったのだろうか。今年(11年)5月で住民の退去は完了し、6月半ばから立入が出来なくなった。
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(住民が残していったであろう年代物のテレビが重なって放置されていた)

敷地の西側は現在管理棟などが入っているが、自分が初めて訪れた時は工事中で、真中部分は既に更地となっていた。これらには嘗て中層団地や給水塔があった。その真ん中の部分には現在シャレール荻窪という近代的な中低層マンションが出来上がり、嘗ての住民の住み替えも終わっているという。
●変化っぷりが凄まじい現在、シャレール荻窪 → UR都市機構 都市デザインサイト - シャレール荻窪のRenovation

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(上の写真の扉を中側から見たところ。暗く妖気漂う感じだが、振り向くと…)

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(中庭から日が射すと吹き抜けの階段が白く浮かび上がる)

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(吹き抜けの階段を見上げる)

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(太い柱が神殿のように建物を支える)

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(廊下に出ると退去した部屋の扉が連なっている)

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(扉は外から南京錠が掛けられ入れないようになっていた)

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(窓の隙間から部屋の中を覗く)

(続く)