拙著ミニコミ誌で、天蓋式(アーケード)商店街を集中して特集することにした。
とはいえ、ただ天蓋式を食べ歩くだけじゃ物足りないなぁと思っていた矢先、上沼田団地の取り壊し風景に出くわしてしまった。
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いや、厳密に言えば、取り壊し直前の状態を目撃したのだった。これにより、団地1Fによくあるアーケード商店街と天蓋式商店街を結んで冬新刊は特集が組める!と思い至った。高度経済成長期の栄華と現状を巡るにはピッタリではないだろうか。

上沼田団地は足立区西部に位置する1960年代の団地ラッシュ草創期に建てられた巨大団地群。昭和30年代築の多くの団地がそうであるように、老朽化から建て替えを余儀なくされて久しい。
半年以上前から取り壊しの準備が始まっていたようで、そばを通るたび気になっていたのだが、つい先日、所要で足立区コミュニティバス「はるかぜ第6弾」の車窓から眺めた際、いよいよもってカウントダウンは近いと見て取れ、先頃急行してみた。
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1~7号棟が今回取り壊しの対象のようで、低層階にはネットがかけられ、階段室入口部分にはベニヤが打ち付けられ、施錠もされていた。
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立ち退きはとうに済んでいるようで、遠目に見える室内は暗く、もぬけの殻の様子。自転車置き場も一部置いていかれた粗大ゴミが野放しになっている他は何もなく、雑草が伸び放題、無造作に生い茂っていた。
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上沼田団地の特徴は、後付された浴室と思われる配管がベランダ側に伸びている点だろう。
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スチール色の鈍く輝く銀が垂直に鉄格子のように幾筋も伸びる様は、特に夜通りかかると迫り来る感覚を覚える。そこにきて外壁そのものが年代を帯び、ヒビ割れ黒ずんでいるから尚のこと迫力を増している。
それが何棟も続く圧倒的な光景に見せられ、機会があれば夜な夜な、中央を南北に貫く主要道路を通るようにしている。

同年代の東側に連なる第2アパート群は今のところ健在で、しばらくはその勇姿を拝むことはできるが、工事区域内におられた警備員に少しお話を伺ったところ、この日の3日後には取り壊しが始まるとのことで(つまり1~7号棟は既に取り壊しが始まっている)、間一髪、当団地群最古参の姿をこの目に焼き付けることができた。
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以前、拙著06年冬号『足立JCT』でサラっと取り上げて以来、幾度となく通りすぎてはじっくり眺めることのなかった上沼田団地。室内に入ることは許されなかったが、この度晴れてできる限り細部にまで窺い知ることが出来た。以上、簡単に写真をピックアップしてみたが、詳しくは拙著今冬新刊を待たれたい。